© Sho Hiratsuka

© Brett Jordan

© Sho Hiratsuka

© Rob Stewart

Interview

インタビュー 自然写真家 高砂淳二さん
ぼくは、海を愛し、感謝し続けます。

インタビュー一覧

高砂写真

高砂淳二さん
自然写真家
世界中の大自然を舞台に撮影した写真集は20冊以上に及ぶ。
代表作は夜の虹を撮影した「NIGHT RAINBOW」。
月の光で現れる夜の虹は奇跡の風景と言われ、見た者には最高の祝福が訪れるといわれている。
最新作は、地球上さまざまな夜空を集めた写真集「ASTRA」。

―あなたにとって、海はどんな存在ですか?

ぼくは、石巻で生まれ育ったんですね。
かつては高砂丸なんていう船まで持っていたような家らしくて、
小さいころから海は近くにありました。

それどころか、うちを囲むように水産高校や水産加工所の倉庫があって、
隣の隣はホヤ屋、
で、その家の前にはウニ屋もありました。

海があった、どころか、海しかない。

毎日の遊び場も海だし、中学の部活のトレーニングだって海でした。
松林の中で腹筋をするんですが、
だんだん、腹筋が上がらなくなってくるんですよね。
そうすると、先輩が、「がんばれ」って言いながら、おなかに松の葉を刺してきたりしてね。

あまりにも海が近すぎて、ありがたみは感じませんでした。
食べるものも、全部、海のもの。
だから、好きだとも美味しいとも思えないんですよ。

それで、大学の進学と同時に、ぼくは栃木県の宇都宮に行きました。
おどろきました。
魚も新鮮じゃないし海も近くにありません。

そうすると、恋しくなるんです。
海に会いたくなって、夜な夜な、大洗へ車を飛ばしたのを覚えています。

大学では、電子工学を学んでいたんですが、
このまま就職するのもどうかなって思って1年間休学してオーストラリアへ行きました。
そこでダイビングをして、
この体験で、海が、まったく違うものになりました。

いままでは三陸の幸を「食べる」海でした。
それが、ダイビングで、生き物を「見る」海に変わったんです。

最初に潜ったのは、オーストラリアの西の海、パースの近くの岸壁です。
外から見るとただの岩の壁なんですが、
潜ってみると、カラフルにキラキラしていたんですよ。

これはすごいと思いました。

ダイビングで人生観が変わる人も多いんですが、
ぼくの場合も、いい意味でショックを受けちゃいましたね。

宇宙遊泳をしたことはありませんが、たぶん、似たような浮遊感があるんです。
カラダってほとんど水で作られていますよね。
だから、水の中に、風船でくるんだ水を入れるようなものです。
どこまでがカラダでどこまでが水なのか、
わからない、その感覚はなんともいえない気持ちよさです。

このころは、単純に、ダイビングって面白いなあとか、
水中写真は面白いなあとか、
それから、あちこち旅に行くのも面白いな、
これを一生続けられたらどんなに楽しいだろうなって思っていました。

海の気持ちよさ

海の生き物

それが1983年でした。
ちょっとずつ変化して、30年が経ちました。

最初は、海の中の生き物を撮影していて、その気持ちよさを撮影していて、
それから海の生き物、そして陸の生き物になって、
虹、空、星と変わって、最近では、夜空にハマっています。

ダイビングが海の生き物って不思議だなって教えてくれて、
そこから、
海の生き物と陸の生き物の違いってなんだろう、
地球のなかでぼくたち人間の役割ってなんだろうってなんだろう、
星ってなんだろう、
そもそも宇宙ってなんなんだろう、
そうやって、好奇心が広がっていったんですね。

頭で考えすぎずに、好奇心や出会いを大切にしてきて、
いろいろ撮ってきましたが、
海は、いつでもその中心にありました。

―あなたにできること

世界中の先住民と会って話すと、みんな、同じことを言うんですよ。

ハワイアン、ネイティブアメリカン、アボリジニ、マオリ。
みんな、共通した自然観を持っています。
地球っていうのは母親だと。
そこに住むぼくたちや動物たちは兄弟や姉妹なんですよね。
それで、地球のおっぱいを吸って生きていると。
父親はスピリットです。
そういうなかで、人間の役割は、地球に暮らす生き物や地球そのものが、
バランスよくやっていけるように見守ることです。
あらゆる先住民が、そういう自然観を持っています。

そのなかでも、ぼくが大きな影響を受けた人がふたりいるんです。

ひとりは、古代ハワイアンの伝道師であるカイポ・カネアクアさん。
ダイビングで海の生き物の不思議にハマってから、
知りたいことが膨らんでいた時期に出会って、面白くて、毎日のように話を聞きに行きました。

いろんな人にステキだねって言ってもらえた写真集、
「NIGHT RAINBOW」は、カイポさんとの出会いから生まれました。

ナイトレインボー

月明かりに輝く夜の虹があると。
それは、最高の祝福と言われているんだっていう話を聞いたんですね。
ハワイに住んでいる人でも、生きている間に見られるかどうか。
いつか見たいなあと思いますよね。
そしたら、カイポさんに話を聞いた三日後に遭遇しました。
それで、ハマった。
撮りためた夜の虹で写真集が出来ました。

カイポさんに教えてもらったことは、アロハ、ですね。
アロハとは愛情です。
人の大事な役割は、アロハを学ぶこと。
ネイティブハワイアンは、この世界にあるすべてのものに神が宿っていて、
その分かち合いによって、
自分たちは生きていると考えているんですね。
誰もが助け合っている。
つまり、人にも、大自然にも、そして、大自然の恵みにも、愛情を注ぎ、感謝する気持ちですね。

もうひとりは、ハワイのカフナでホ・オポノポノを継承している、
ハレアカ・イオラニ・プレさん。
ホ・オポノポノは、人と人、人と自然、人と神々など、間のバランスを保つ考え方です。
リスペクト、感謝、愛情、許す気持ちをもって、
コミュニケーションすること。
こういう気持ちを意識して自分の中に持っていれば、ケンカにもなりません。
自分自身が、周りの環境を作っていくんですよね。

自分自身のバランスだってホ・オポノポノです。
自分の本当の気持ちと、やらなければいけないことが離れすぎてしまうと、
バランスを崩してしまいますよね。
ときどき、ありがとねって自分に声をかけてあげること。
「今日は一日やりたいことをやろう」って、メンテナンスしたほうがいいと思うんです。

ペンキがあまったらどうするか。
誰もみてないから黙ってジャーって撒いちゃうとかね、
こういうのも、
大地が母親だと思ったら出来ないですよね。

海を、ただ、資源として考えたら、
どうにか獲りつくしてやろうっていう気持ちになってしまいますが、
そうではなく、
命を持っているものとしてリスペクトすること。

いつでも、自分なんです。
自分自身が、環境を作っていくんです。

あらゆる先住民が共通して持っている自然観は、ぼくは、真実だと思いますね。

ぼくに出来ることは、海を愛し、感謝し続けること。
そういう気持ちが、ぼくの写真から少しでも伝わっていけば幸せですね。

繋がり・大地